神戸市東灘区の小児科・アレルギー科ならばやしこどものアレルギークリニック

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NAC隊長のソロ活動SOLO WORK

食物アレルギーのある学童に向けたNACの取り組み⑤

栄養学の世界で食物アレルギーに取り組む第一人者である別府大学のT先生にお願いして、バンズに含まれる乳タンパク質の量を測ってもらいました。

すると、多くのこどもたちが利用する業界最大手Mc社のバンズに含まれる乳タンパク質はとても少ないことが判明しました。

どれくらい少ないかというと、もしこのハンバーガーがスーパーやコンビニで包装された状態で売られていた場合に食品表示法で表示が義務づけられているアレルゲン含有量に満たない程度 です。

これなら多くの牛乳アレルギーのこどもが食べられるかもしれません。

そこでNACでは、学童期以降も牛乳摂取に制限があるこどもたち10人にMc社のハンバーガーを食べてもらう試験を行いました。

結果はもちろん、全員、1個食べて二時間経過しても症状が出ませんでした。

みんな喜んでくれましたし、その後、実際にお店でも食べてみて、症状が出ることなく食べられたと報告してくれました。

みんな笑顔がキラキラしています。

食物アレルギーのある学童に向けたNACの取り組み④

たとえば、牛乳アレルギーのあるこどもたち。

NACでは牛乳を完全に除去しているこどもはいません。みんな、自分が安全に食べられる量を食べてくれています。

そんな彼らも外食では乳成分が入っているものは食べないようにしているようで、大手ファーストフード店で彼らが食べているのは

 

「ポテトと(チキン)ナゲット」

 

それって、サイドメニューじゃん!て思ってしまいます。

でも実はみんな本当はハンバーガーを食べてみたい気持ちがあるんです。

ハンバーガーの何に牛乳が使われていそうでしょうか?

バンズ(パン)です。お店のホームページには商品ひとつひとつに特定原材料に指定されている7品目とそれに準ずる21品目のどれが含まれているか掲載されています。

じゃあ、バンズにどれくらい牛乳が含まれているかわかれば、もしかしたら牛乳アレルギーがあっても食べられるのでは?

食物アレルギーのある学童に向けたNACの取り組み③

学童期に入ってもまだ食べられる量に制限があるこどもたちが出来ること、それは・・・。

まだ医学的に証明されたわけではないのですが、NAC隊長の考えは、食べられる量を地道に食べること です。

そうやって、体の中でアレルギーがある食材を受け入れる「免疫寛容」がじわじわ広がっていくのを期待するのです。

制限なく食べられるようになるかどうかはわかりません。

ですが、食べられる量が増えてくれば、加工品や外食で食べられるものが増えていきます。

もちろん、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎(花粉症も含む)などを合併しているなら、それらもきっちり“いい状態”に維持する必要があります。

 

あれ?経口免疫療法と同じじゃないの?

食物アレルギーのある学童に向けたNACの取り組み②

研究会をwebで聴講してくれた友人・知人から「いい発表だったよ」という嬉しい知らせをいただきました。

 

学童期までに食べられるようにならなかった子供たちに向けた治療として『経口免疫療法』というのがあります。

もう10年位前から行われている治療ではありますが、いまだに「研究段階」の域を出ず、一般化された治療ではありません。

当初は「日常摂取量(卵1個、牛乳200ml、うどん200g)を目指す」ものでしたが、それだと無理があることがわかってきて、現在は「少しでも食べられる量が増えるように」という風に変わってきています。

食物アレルギーがある子供たちの願いは「量や状態など、いろんなことを気にせず食べられるようになること」だと思うのですが、経口免疫療法はそういう治療ではありません。

他には生物学的製剤を併用した経口免疫療法や、経皮免疫療法などが研究中ですが、いずれも問題がありなかなか実用化の目途が立っていません。

では、今出来ることはなんでしょう?

 

 

 

食物アレルギーのある学童に向けたNACの取り組み①

忙しい土曜日の午後を休診にしてしまい申し訳ありませんでした。

研究会で発表をしました。

タイトルは「牛乳アレルギーのこどもたちがファーストフード店で何を食べているか知ってますか?」という、およそ真面目な発表らしくないもの。

内容は日々の診療でNAC隊長が感じている問題点を多くの医療者の方々に知ってもらうためのもので、好評だったと思います(そんな手ごたえがありました)。

コロナ禍になってから、久しぶりに“リアルな場”で発表出来て嬉しかったです。

2015年にピーナッツアレルギー発症予防に関する研究報告が世に出てから、毎年のように新しい研究報告が出され、これまでのところ、ピーナッツ、鶏卵、牛乳の各アレルギー発症予防に関する研究報告が出ています。

いずれも乳児期早期から食べ始めたほうが、食べなかった場合に比べてアレルギーの発症が少なかったというものです。

牛乳に関しては食べ始める時期も重要と言われています。

こうした研究成果が普段の診療に取り入れられれば、今後食物アレルギーは減ってくるかもしれません。

けれども、発症をゼロに出来るわけではないので、発症してからの「治療」も考えなければなりません。

食物アレルギーの治療といっても、たちどころに食べられるようになる薬があるわけではありません。

「除去すること」というのは昔の話で、今は「食べられる量を食べること」です。

多くの場合、鶏卵や牛乳、小麦のアレルギーは食物経口負荷試験を行って安全に食べられると確認できた量を食べ続けることによって徐々に食べられる量が増えます。

増量するときも負荷試験で安全性を確認するのですが、最終的に卵なら1個、茶わん蒸しやかきたま汁、マヨネーズまで食べられるようになれば日常生活に支障はありません。

牛乳なら200ml、小麦ならうどん200gや食パン1枚程度と言われています。

でも中には、食べられる量がなかなか増えない子もいます。学童期までに食べられるようにならなかった子供たちは、もうその食材を食べようとしなくなってしまうことも少なくありません。

今回の発表では、学童期までに牛乳を制限なく飲めるようにならなかった子供たちの現状をお伝えし、制限がある中でも生活を彩りあるものにするためにNACで行っている取り組みについて報告しました。

長くなるので次に続きます。