神戸市東灘区の小児科・アレルギー科ならばやしこどものアレルギークリニック

神戸市東灘区本山中町4丁目13番15号ご相談 078-412-7925

NAC隊長のソロ活動SOLO WORK

アトピー性皮膚炎について一言

今年度から、本山第一小学校の校医の役目をいただきました。

今年はコロナウイルスの影響から、例年通りのスケジュールで健診を行うことができず、秋までずれ込んでいますが、今日の時点で残すは4年生だけとなりました。

この学校はNACに通ってくれているお子さんがたくさんいるだけでなく、養護の先生方がとてもフレンドリーなおかげで、まるでhome groundで診察しているような気分です。

NAC隊長はアレルギー専門医であると同時に小児科専門医ですので、小学生の健康管理に大きな使命感を持って診察しています。

けれどもその中でやはり気になってしまうのはこどもたちの“肌”です。

「アトピー性皮膚炎」と指摘した児童が各学年に複数名います。

NAC隊長は小児科専門医であると同時にアレルギー専門医ですので、アトピー性皮膚炎で困っているこどもたちに対して強い情熱を持って診療しています。

これまでに指摘した児童の多くがきちんと受診して、返書を学校に提出してくれています。

それらをみて気になったことが3つありましたので、この場でまとめます。

まず、ほとんどのお子さんが「すでにどこかにかかっている」という返事でした。

もちろん、そんなことは百も承知で指摘しました。

「すでにどこかにかかっている」のに明らかにかゆそうな所見があって、本人も「かゆくて困っている」と言うのです。それでいいの?と思ったからこそ指摘したのです。

今回、NACにかかってくれている児童に対して「アトピー性皮膚炎」と指摘することはほとんどありませんでした。わざわざ指摘しなくても親御さんもNAC隊長もすでにわかっているから、ではありません。

指摘する必要がなかったからです。指摘する所見がなかったからです。

多くのお子さんとご家族が皮膚のケアを上手に行ってくれているのですね。

でもそんなこどもたちも、初めてNACに来てくれた時は明らかにかゆそうな湿疹が目立っていました。

NACは開院してまだ4年目ですから、彼らが初めてNACを受診した理由のほとんどが「ほかにかかっているけど良くならないから」というものでした。

アトピー性皮膚炎と付き合うのに必要なものは、二つ。「医療者の情熱」と「家族・本人の根気」です。

NACのスタッフは、かゆそうな湿疹があるこどもを目の前にすると「なんとかよくしてあげたい」という思いがこみ上げてきます。湿疹やかゆみが「あってあたりまえ」ではなく「ない状態がスタンダード」にしてあげたいと思うのです。

「根気」と表現しましたが、最初は大変かもしれませんが、上手に付き合えば「ほんのひと手間」程度の労力になります。

かゆみから解放されたこどもたちは表情が目に見えて変わってきます。性格も変わってきます。NAC隊長が健診で指摘した児童にもそうなってほしいと思って指摘したのですが、思いは届かなかったようですね・・・。いや、いつか届いて欲しいと思って、ここに書いてみることにしました。

二つ目の気になった返事は、「検査したらアトピーではなかった」というものです。アトピー性皮膚炎は検査して診断するものではありません。検査は診断の補助にこそなれ、診断の決定要素ではないのです。大事なことは皮膚をいい状態に保ってあげることですが、それを実行するにはその湿疹がアトピー性皮膚炎によるものであって、アトピー性皮膚炎とはどんな病気かを知ることがとりわけ大事なのです。

三つ目の気になった返事は、「すでにかかっていて、スギとダニの舌下免疫療法もしている」というものです。「スギとダニの舌下免疫療法」というのはアレルギー性鼻炎に対する治療で、本来なら避けたい「スギ」や「ダニ」といったアレルゲン(症状の悪化因子)をあえて体に取り込むことによって鼻炎を治してしまおうという治療です。

アトピー性皮膚炎の治療の一環として、生活環境から少しでもダニを少なくする努力が必要なのは多くの医療者が認めるところです。それなのに、ダニのエキスを取り込むことは、もしかしたらアトピー性皮膚炎を余計悪くしている可能性が否定できません。ダニの舌下免疫療法を行う際の大前提は「皮膚の状態をよくしておくこと」です。NACでも多くの方が舌下免疫療法を行っていますが、皮膚の状態がよくないまま開始することはありません。

 

今回の健診で「アトピー性皮膚炎」を指摘した児童の中には重症の子もいました。彼ら彼女らが大きな痒みストレスから解放もしくは軽減される日が来ることを願ってやみません。

(タイトルで『一言』と言いながら長くなってしまいました。この思いが、然るべきこどもたちに伝わりますように・・・)