4月27日付 神戸新聞に掲載されました。
ちょっと前の話になりますが、4月27日付け神戸新聞の『カルテQ&A』というコーナーに木の実類アレルギーについて記事を書かせて頂きました。以下に全文を再掲します。
2019年の夏、「クルミとカシューナッツを食べて症状が出た」というお子さんの来院がたくさんあり、木の実類アレルギーの増加を肌で感じました。
消費者庁の調査によると、食物アレルギーの原因食物として鶏卵、牛乳、小麦が長らく上位にありましたが、2020年に「木の実類」(ナッツ)が小麦を抜いて3位に、23年には牛乳も抜いて2位に浮上し、1位の鶏卵に追い付きそうな勢いです。とりわけ増加が目立つのはクルミとカシューナッツです。健康志向の高まりで、木の実類を食べる機会が増えたことが原因と考えられます。
木の実類とひとくくりにされがちですが、どのナッツにアレルギーがあるかは個別に症状の有無を確認する必要があります。木の実類のアレルギーは一度発症すると、その後、食べられるようにはなりにくく、誤食するとアナフィラキシーと呼ばれる重篤なアレルギー反応が出る恐れがあります。従って、日常生活では厳格に除去しなければなりません。
菓子などの加工品は国が指定した「特定原材料」として表示するよう義務化が進められていますが、外食をはじめテイクアウト、デリバリーといった中食は表示義務がないため誤食のリスクがあります。加工品でも表示ミスや見落としで誤って口にしてしまうことがあります。
アナフィラキシーの既往歴がある人や、微量の摂取で症状が出る人は一時的に症状を和らげる「アドレナリン自己注射薬」(商品名・エピペン)を処方してもらい、食事の際は常に携帯した方が良いでしょう。エピペンは必要時に正しく使えなければ意味がありません。処方してもらう際は、持ち方や注射部位を含めた使用法を教えてもらい、どんな症状で使うべきか主治医と相談する必要があります。
有効な治療法がない木の実類のアレルギーは将来、幅広い世代で有病率が高まると予想され、アレルギーがない人も疾患について知ってほしいです。